こんにちは、デザイナーの佐々木です。
この春、実家に介護用のベッドが届きました。2年半ほど前に家族が要介護・障害者となり、施設から家に戻るときに必要になったためです。
病院で使われるベッドは基本的に介護用の機能を備えているのですが、主な機能に高さの調節、背中や足の傾き調整(この辺は電動)、落下防止の柵(開け閉め可能)、寝たまま食事ができるようなパイプフレームテーブル機能などです。新品で買うと結構いいお値段(30万位から〜)するのですが、1モデル型落ちの中古だと半値以下で買えちゃいます。メーカーに型落ちや中古の販売をしていないか聞いたのですが、あっさりと玉砕。(まぁ、メーカーにしたらそうですよね。)世の中高齢化のあおりか、結構ニーズはあるようで、ネットで検索するといろんな業者さん達が誠意営業中。(こういう時、近所で買えるか探せるネットって便利ですよね。)
まだ自分はお世話になる感じでは無いのですが、介護ベッドって使ってみると結構快適です!
寝たまま、リモコンで適度に身体を起こせるし、そのまま食事もできちゃったり…。
(あぁ、今からそんなもの使っちゃったら、きっと、そのままメタボになっちゃう…。)
で、このベッドなのですが、サイズ(特に横幅)にいくついかバリエーションがあるのです。設置できるスペースの違いかなぁ、使う人の体格の差かなぁ、位に軽く考えていたのですが、聞いたところ関東と関西ではデフォルトのサイズが違うのだそうで。ちなみに関西の方が横幅が広いそうです。基本幅、関東83cm、関西91cmでした。そういえば、大工の父が話していましたが、畳も関東と関西でサイズが違うと以前に聞きました。詳細は省きますが、畳ができた頃の京間(関西基準)と量産の規格化された江戸間(関東基準)での測り方の違いがその差として反映されています。だから関西の病院では91cm幅のベッドがほとんどだそうです。
でも、住んでるエリアの基準って、そのエリアの外に行かないと気が付きませんよね。
大昔は家電も関東と関西で電圧や周波数が違っていたために、引っ越しなどで境をまたぐと使えなかったとか。今で言うところの海外旅行的な感覚でしょうか。先のベッドの幅の差程度だったら、個人レベルではさほど困りはしなさそうですが、大量に導入するとなると大きな違いになりますよね。
規格といえば、身近なものや広範囲での使用が考えられる量産が必要なものは(規格を)統一してしまえば、余計な?バリエーションを減らせるので生産性も効率も上がりますよね。
(たとえば、日本の教育現場だと、男の子=青、女の子=赤、といった色の住み分けがあったりするので、教材で使うカスタネットは赤と青の対で作っておけば男女問わず全員に配れる設計になっているとか。)
何もかもが統一されたほうがいいというわけではありませんが、共有できるものはその方が効率も採算も上がって、結果クオリティも上げられるのかな。いろいろな地域(国)や年齢・性別なんかも気にしなくてすみますものね。
身近にあるものにたとえればピクトグラムなんかがそうですね。いかにシンプルな要素で多くの人にきちんと情報を伝えるか考え、デザインされたものです。横断歩道の信号機も色と形の組み合わせで、国内外を問わず誰にも伝わるようになっています。
そういえば、浮世絵の絵暦や教会のステンドグラスも文盲率が低かった頃につくられたコミュニケーションツールだったそうですね。(聖書の物語や思想を伝えるため、そして光を利用する事で神々しさを演出したり。)
その辺、工夫されているのがIKEAの取説。組み立て図だけプリントされていて、解説の文字なんてありません。いっさい、まったくありません。すごい。確かにそれだけ“シンプルにして、見てわかる”状態にしておけば、グローバルな展開をどんどん進めていっても、いろんな国向け・他言語の取説作らないでいい分、簡単に済んでしまいます。余計な費用もかからないですし。取説というツールの位置づけをピクトグラム的な考え方でデザインしたのでしょうか。すごいなぁ、無駄がすくなくて、しかもエコだなぁ。
今の介護ベッド、電動で背もたれだけでなく、動きに合わせて膝の角度も一緒に調整してくれて身体を起こすのが大変楽です。ちょっとしたところでも何気に快適度上がっています。きっと人の身体の動きや仕組みを考えて取り入れているのでしょうね。ユーザーの使い勝手を考慮して一つ先の気配り。かゆいところに手が届く事を感じさせない、シンプル&優しさ。
介護の現場はとても気力・体力を消耗します。実家に届いたベッドは介護する方、される方、双方にやさしくなっていました。
“人に優しく” 言葉にすると簡単ですが、なかなか実行するのは難しいです…。
ユニバーサルデザインの7原則
* どんな人でも公平に使えること
* 使う上で自由度が高いこと
* 使い方が簡単で、すぐに分かること
* 必要な情報がすぐに分かること
* うっかりミスが危険につながらないこと
* 身体への負担がかかりづらいこと(弱い力でも使えること)
* 接近や利用するための十分な大きさと空間を確保すること