UI/UXデザイナーの出口です。
アプリなどの開発にあたり、UIデザインだけではなく、その前段階として要件定義や画面遷移、画面設計なども手掛けています。
これらの作業では、お客様や同じ開発チームのメンバーと開発に必要な情報を共有しながら作業を進めていくことになるわけですが、情報量が多いプロジェクトになるにつれ、情報の把握と管理が大変になってきます。
情報共有の段階で認識の食い違いが発生しやすくなりますし、出来上がるアプリケーションも利用者にとってわかりづらいUIになってしまいます。
そこで、最近では「統制語彙」を取り入れた情報設計を行ない開発を進めるようになりました。デザイナーだけでなく開発にかかわる全ての方が取り組むことができる手法で、普段から開発を依頼してくださり一緒に開発を進めているお客様にも簡単に参加していただけています。この取り組みについて紹介したいと思います。
統制語彙を使った情報設計との出会い
この取り組みを始めたきっかけは、2016年に開催された「UX DAYS TOKYO 2016」というカンファレンス&ワークショップに参加したことがきっかけでした。
ワークショップへは、デザイナー陣と選抜されたエンジニアの方々数名と共に参加しました。
このあとに登場する「統制語彙」の取り組みについては、登壇したAbby Covert(アビー・コバート)先生のワークショップ「みんなのための情報アーキテクチャ」を参考にして取り組みを開始した次第です。
書籍の紹介
ちなみに、Abby Covert先生による「今日から始める情報設計」という書籍も出版されています。ワークショップの内容もこの書籍に沿って進められ、更に理解を深められるよう紹介されました。(ちなみにワークショップにて、ちゃっかり先生のサインを頂きました!)
今回このブログで紹介するのは、ワークショップや書籍で紹介された考え方をベースとしたアプリケーション開発例ですが、書籍では様々な参考例や解決方法について触れた内容になっていますので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。
統制語彙をつかって開発!
現在取り組んでいる統制語彙の取入れ方としては、主に単語などキーワードとなる言葉の整理と統一です。同じ物事を指す言葉に対して、違う表現を複数個用意して使い分けるようなことはせず、どのような表現・表記が正解なのか?を考えたうえで、常に唯一になるように設定します。
どのような表現・表記が正解なのか?で統一する
よくある簡単な例でいうと、サービス名などです。アシアルでは「Monaca」というサービスを提供しているのですが、「Monaca」が正式な表記なので、「monaca」や「もなか」、「モナカ」、「最中」という記載をしないようにしようということです。
キーワードを統一せずに記載すると、人によっては異なるサービスが複数あるように感じたり、「正式な表記はどれなんだろう」と混乱する人が出てくると思います。
スマートフォンアプリ開発時の統制語彙
スマートフォンアプリ開発の例では、アプリを開いて必ず最初に表示されるページのことを「マイページ」と呼んだりすることがあると思いますが、開発チームのメンバーが複数人いると、この「マイページ」のことを「トップページ」や「ダッシュボード」と呼ぶ人もいます。
しかし、「このアプリでは、マイページと呼ぶことにしましょう!」と決めておき、ほかの呼び方はしないようにしたとします。
これらの決まりごとを要件定義などで設定したら、画面遷移図や画面設計書などの資料を作成する時も、同じキーワードで記載します。もちろん開発チームのメンバーが各自で作成する様々な資料も同様です。そして、スマートフォンアプリを実装する時も、キーワードは統一して制作します。
これで、違う種類の資料を沢山用意しても、同じキーワードで記載した名称などは、同じ物事を指していることがわかりやすくなりますし、資料を作成した当事者以外の人が読んでも、時間がだいぶたった後で自分が忘れてしまって読み返したときにも情報の把握がしやすくなります。
統制語彙を使わない開発時のデメリット
キーワードが統一されてない開発はどういったデメリットが発生するかというと、余計な工数が発生したりします。
例えば、先ほどのスマートフォンアプリ開発の例であげた「マイページ」のことを別の画面では「ダッシュボード」と記載するよう指示書が作成されていたら、他の開発チームのメンバーから「ダッシュボードの画面なんてありましたっけ?」「そこへの遷移はどこにありましたっけ?」みたいな質問時間がお互いに多くなったり、最悪、確認が行き届いてないとマイページではない謎のダッシュボード画面らしき何かが仮実装されてしまうわけです。
また、出来上がったアプリケーションを利用するお客様からみても、「マイページ」と「ダッシュボード」は違う画面だと認識しまい、アプリ内で迷子にさせてしまうかもしれません。
このようなデメリットが、扱う情報量が多くなるごとに膨れ上がるわけです。。。
取り組みは、こういったことを避けるために序盤の工程から意識して開発を進めましょうということです。
最後に
今のところ、こんなかんじで統制語彙を意識して情報設計・開発しています。
私自身も1人で考えて作業しているとたまに見落としてしまいますが、開発チームのメンバー全員で取り組むことで、見落としを指摘いただくなどして早い段階で改善できたと感じることが多くなってきました。まだ社内で普及活動が行き届いていなくて取り組みに参加できていない方にも、一緒に取り組めたらなと思い書きました。(普及したい。。。)
このブログを読んでいただいた方にも、お役に立てればと思います。